週記(2020.4.6〜4.12)ぬか床ソラリス

ぬか床を一から拵え始めた。床を作るのはこれで3回目だと思う。前回は元夫の母(元姑)からべらぼうに美味しいぬか漬けができる床を分けて貰って始めたが、離婚して広島から東京に引っ越すにあたり、運搬が難しいため泣く泣く廃棄した。兼業農家の元姑のぬか床は糠から自家製のため異常に美味しいが、水分が多く異常に匂ったのだ。

人生のあちらこちらにぬか床と果実酒の痕跡が残り続けている。大学生の時に彼氏と付き合い始めた記念に漬けた梅酒は今も実家の棚の中で良い味を出しているだろうし、その彼氏と別れた後に付き合った人との結婚記念に漬けた梅酒は、忌々しいので離婚後に友達と飲み尽くした。もうなにかの記念に漬けるのはやめようと思っている。

さて、今回始めたぬか床は記念というわけでもなく、ただ家にいる時間が増えて、前回のぬか床への罪悪感も薄まったので再チャレンジしよう、と思い立った。その日のうちに近所の米屋さんから500g50円の生糠を分けて貰い、あとは家にあるもので適当に作った。本当はミネラルウォーターや粗塩なんかでやると良いらしいが、そういうこだわりで自分の生活が続いた試しがないのでやめた。水道水と伯方の塩で充分である。水道水も一度沸騰させて、とか、生糠は一度炒って、とか、流派が色々とあるらしい。知らねえ、俺はぬか床を早く混ぜてぇんだ、と思って全て無視した。幸いにも昆布や鰹節、干し椎茸に唐辛子と柚子が家にあったのでぶち込んでいる。

ぬか床の最大の良さは大人でも合法泥遊びができる点である。公園でやる大人の泥遊びは違法ではないが、そこはかとなく脱法の香りがしてしまう。家で堂々とネチネチした粉をこねくり回せる至福。賃貸の我が身には菌もペットがわりになって可愛い。
一通り混ぜて、しっかりと上から押して空気を抜いたぬか床は見た目にも立派な床で嬉しく、未来じゃん、と思った。

折角だからこのぬか床に名前をつけてやろう、と思い至って本棚を眺めると、スタニスワフ・レム著/飯田規和訳の「ソラリスの陽のもとに」があったのでソラリスと名付けた。